卵巣の左右で卵子の質は変わる?いつも片方からしか採卵できない
「どちらかの卵巣に主席卵胞が偏る」
- 左右差は生理的にあり得ます。完全な「交互」ではありません。自然周期の観察でも右側優位(右>左)が有意に多いという報告があります。(PubMed)
- 解剖学的・生理学的な非対称が関与すると考えられています(右卵巣静脈は下大静脈へ、左は腎静脈へ流入=血流・酸素分圧やホルモンの洗い出しの差、神経支配や免疫環境の微差など)。機序は確定していませんが、近年レビューでも「血管・神経・免疫の相互作用による微小環境差」が指摘されています。(NCBI)
- 個別因子としては、過去の手術・炎症(例:子宮内膜症)、卵管通過性や子宮位置の個体差、刺激法による反応差などが偏りを助長し得ます(一般論)。臨床画像で妊娠初期の黄体の側方を大量に追跡した研究でも、右側寄りの傾向が示されています。(PubMed)
「右/左で“卵子の質”に差があるのか」
自然周期:右側での排卵の方が妊娠に結び付きやすかった、という古典的な大規模観察があります(右55%・左45%、妊娠率も右優位)。ただし観察研究であり因果は不明です。(PubMed)
採卵(ART)領域:結果はまちまちです。
— 右卵巣の方が「卵胞動員や採卵数・受精」に有利という報告。(サイエンスダイレクト)
— 一方で「左右差なし」とするIVF患者の前向き解析もあります。(OUP Academic)
— 右卵巣由来で「良好卵子・受精率が高い」との報告もありますが、収量や分割率には差がないなど、エビデンスは一貫しません。(PubMed)
総合すると、「右が統計的にやや有利」と示す研究はあるものの、採卵成績や胚発生・妊娠の予測に“臨床的に使えるほど明確な左右差”が確立しているわけではありません。年齢・卵巣予備能・刺激条件などの方が影響は大きい、というのが実務的な結論です。(サイエンスダイレクト)
補足(よくある疑問)
「同じ側ばかり排卵するのは異常か」:自然でも偏りは起こり得ます。周期ごとに必ず交互ではありません。(PubMed)
・「偏りを矯正できるか」:左右を狙ってコントロールする確立手段はありません。刺激条件の最適化や内膜環境・回収手技の工夫など、全体最適の方が合理的です(左右差そのものを是正する介入エビデンスは乏しい)。(サイエンスダイレクト)
参考(主要文献)
・Fukudaら:右側排卵の頻度・妊娠率が高い(自然周期)。(PubMed)
・Lanら:GnRHアゴニスト下で右卵巣の反応が優位(ART)。(サイエンスダイレクト)
・Thomsonら:IVFで左右差なし。(OUP Academic)
・Rowanら:妊娠初期の黄体側方の観察。(PubMed)
・Taheripanahら:右卵巣で良好卵子・受精率が高いが、収量差はなし。(PubMed)
結論
・主席卵胞が一側に偏ることは珍しくありません。背景には左右の解剖・生理の微妙な違いが推測されています。
・「どちらの卵巣が優れているか」については、右優位を示唆する研究はあるものの、ARTの実臨床で意思決定を左右するほど確立した結論ではありません。全体の治療設計(年齢・AMH、過去反応、採卵手技最適化)の方が重要です。




