顕微授精で受精しない原因(精子側)
顕微授精は、体外受精(IVF)の一種であり精子を直接卵子に注入することで受精を試みる高度な生殖医療技術です。しかしながらICSIを行っても受精が成立しないケースがあります。その原因として卵子側の問題だけでなく精子側の要因が大きく関与していることが知られています。ここでは精子が原因でICSIで受精しない理由を医学的エビデンスを用いてで説明します
ICS(顕微授精)
ICSI(顕微授精)は単一の精子を微細な針を用いて直接卵子の細胞質内に注入する技術です。これにより精子が自力で卵子に侵入できない場合でも受精が可能となります。男性不妊の治療において精子数が非常に少ない場合や運動率が低い場合、抗精子抗体が存在する場合などに広く利用されています
受精失敗の問題点
しかしICSI(顕微授精)を行っても受精が成立しないケースが報告されています。この受精失敗は不妊治療における大きな課題であり原因を明確にすることが治療の成功率を高めるために重要です
精子が原因でICSIが失敗する原因
ICSIで受精が成立しない原因として精子側の以下の要因が考えられます
- 精子の形態異常
- 精子のDNA損傷
- 精子の活性化障害
精子の形態異常と受精失敗
頭部異常の影響
精子の頭部は遺伝情報を含む核と卵子の透明帯を通過するための酵素を含む先体から構成されています。
- 先体欠損先体が欠損していると卵子の膜を溶解する酵素が不足し受精が困難になります
- 核異常核の形態異常やクロマチン凝縮不全は遺伝情報の正常な伝達を妨げ受精後の胚発生に悪影響を与えます
中片部・尾部異常の影響
中片部はミトコンドリアが集中しており精子の運動エネルギーを供給します。尾部の異常は運動能力に影響しますがICSI(顕微授精)では精子を直接卵子に注入するため、一見関係がないように思われます。しかし以下の点で影響があります
ミトコンドリア機能不全エネルギー代謝の障害があると、受精後の胚発生に必要なエネルギー供給が不足します
精子のDNA損傷が受精および胚発生に与える影響
DNA断片化の影響
精子のDNA断片化は受精率の低下や胚発生の停止、流産のリスク増加に関連しています
- 受精率の低下:DNAが断片化していると受精が成立しても胚の発育が停止する可能性が高まります
- 胚発生への影響:DNA損傷が胚の細胞分裂や遺伝子発現に悪影響を及ぼし着床障害や流産の原因となります
エピジェネティックな異常
精子のDNAメチル化異常やヒストン修飾異常は受精後の胚発生や遺伝子発現に影響を与えます
遺伝子発現の異常:エピジェネティックな異常は発生関連遺伝子の発現を妨げ胚の正常な発育を阻害します
精子の活性化障害と卵子活性化失敗
精子由来の卵子活性化因子の不足
受精時に精子は卵子に卵子活性化因子であるホスホリパーゼCゼータを供給しP卵子内でカルシウム振動を引き起こし受精のシグナルを開始します
PLCζの欠損精子にPLCζが欠如していると卵子の活性化が起こらず受精が成立しません
卵子活性化失敗のメカニズム
- カルシウムシグナルの欠如PLCζが不足すると卵子内でカルシウムの波が起こらず受精が開始されません
- 第二極体の放出不全卵子の減数分裂が完了せず染色体異常を引き起こす可能性があります
卵子側の問題のみが原因であるという考え
一部の意見ではICSIでの受精失敗は卵子側の問題が主な原因であるとされます。しかし以下の点から精子側の要因もあります
- 精子のDNA損傷卵子が正常でも精子のDNA損傷が受精後の胚発生を阻害することが示されています(Evenson et al., 2002)
- 精子由来の卵子活性化因子の不足卵子が正常な場合でも精子にPLCζが欠如していると受精が成立しません(Yoon et al., 2008)
精子はICSIでは重要でないという誤解
ICSIは精子を直接卵子に注入するため精子は問題にならないと考える人もいます
- 形態異常の影響:形態異常のある精子はDNA損傷やエピジェネティックな異常を伴うことが多く、受精や胚発生に悪影響を及ぼします(Menkveld et al., 2011)
- DNA損傷の影響:ICSIでは精子の運動能力は不要ですが、DNAの質は重要であり損傷があると胚の発育が阻害されます
エビデンス
精子DNA断片化と受精率の関係
Evenson et al. (2002) は精子のDNA断片化指数(DFI)が高い男性ではICSI後の受精率や妊娠率が低下することを報告しています
方法:不妊症の男性から精液サンプルを収集し、DFIを測定
結果:DFIが高いグループでは、受精率が有意に低かった
PLCζの欠損と受精
Yoon et al. (2008) は、PLCζが欠損した精子を用いたICSIで受精が成立しなかったケースを報告しています
方法受精失敗したカップルの精子と卵子を解析
結果精子にPLCζの発現が見られず、人工的な卵子活性化を行うことで受精が成立
精子の品質改善策
生活習慣の改善
抗酸化物質の摂取ビタミンC、ビタミンE、亜鉛、セレンなどの抗酸化物質は、精子のDNA損傷を減少させます
禁煙・禁酒喫煙・飲酒は精子のDNA損傷を増加させます
抗酸化療法臨床試験では抗酸化サプリメントの投与が精子のDNA断片化を減少させることが示されています(Greco et al., 2005)。
精子選別技術高磁場活性化細胞選別(MACS)などの技術でDNA損傷の少ない精子を選別することが可能です
結論
ICSIで受精が成立しない原因とし、精子の形態異常、DNA損傷、活性化障害などが重要な要因となります。これらの問題は卵子側の問題だけでは説明できず、精子がICSIの成功に直結することが医学的エビデンスによって示されています。したがって精子を改善するための生活習慣の見直しや医学的介入が受精率の向上に関係する可能性があります
参考文献
- Evenson, D. P., Larson, K. L., & Jost, L. K. (2002). Sperm chromatin structure assay: its clinical use for detecting sperm DNA fragmentation in male infertility and comparisons with other techniques. Journal of Andrology, 23(1), 25-43.
- Yoon, S. Y., et al. (2008). Human sperm devoid of PLC, zeta 1 fail to induce Ca(2+) release and are unable to initiate the first step of embryo development. Journal of Clinical Investigation, 118(11), 3671-3681.
- Menkveld, R., et al. (2011). Sperm morphology assessment: historical perspectives and current opinions. Reproduction, Fertility and Development, 23(1), 45-63.
- Greco, E., et al. (2005). Reduction of the incidence of sperm DNA fragmentation by oral antioxidant treatment. Journal of Andrology, 26(3), 349-353.
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