朝食を抜くプチ断食・ファスティングが卵子の質とホルモンバランスに与える影響
プチ断食(ファスティング)が健康法として注目され朝食を抜くスタイルを実践している方も多いかと思います。確かに朝食を取らないことで準備の手間が省け簡単に実践できる健康法として人気です。しかし妊娠を望む方にとって朝食を抜くことが長期的にどのような影響を与えるのかを理解することが非常に重要です
確かにファスティングによってミトコンドリアの機能が一時的に上昇し細胞のエネルギー生産能力が高まることが研究で示されています。しかし、この効果は短期的なものであり定期的にファスティングを行うことで効果を維持する必要があります。しかし頻繁にファスティングを行うことでコルチゾールが慢性的に増加し不妊やホルモンバランスへの悪影響を引き起こすリスクが高まるため注意が必要です
ミトコンドリアの一時的な上昇効果
ファスティングの最大の利点の一つにミトコンドリアの増加が挙げられます。ミトコンドリアは細胞の「エネルギー工場」として機能し脂肪の燃焼やエネルギー生産を促進します。短期間のファスティングはミトコンドリアの数を増やし、細胞の代謝能力を向上させる効果が期待できます。
ファスティングによるコルチゾールの影響
ファスティングは短期間の健康効果を維持するために推奨されることもありますが、これを頻繁に行うことはコルチゾールの慢性的な上昇につながります。コルチゾールは「ストレスホルモン」として知られ体がエネルギー不足を感知した際に副腎から分泌されます。長期にわたるコルチゾールの上昇は以下のような不妊や生殖機能に対するリスクを増大させます
- 性ホルモンのバランス乱れ女性ではファスティングによって生理不順や不妊のリスクが増加する可能性があります。エストロゲンやプロゲステロンの分泌が不安定になることでホルモンバランスが崩れることがあるため注意が必要です。(卵胞が見えない・育ちにくい低AMH群や多嚢胞性卵巣症候群の方々などには勧めていません)
- 甲状腺ホルモンの低下ファスティングによって代謝が低下し、甲状腺ホルモン(特にT3、T4)が減少することがあります。これによりエネルギー消費が低下し基礎代謝の速度が落ちるためファスティングの効果が減少することがあります。
- 副腎疲労や慢性的なストレスを抱えている場合コルチゾールの過剰分泌が悪化するリスクがあるためファスティングは慎重に行うべき
卵子の質を守るためにメラトニンの分泌が重要
メラトニンは卵子の質を守るために非常に重要なホルモンです。メラトニンは抗酸化作用を持ち卵子をフリーラジカルなどの酸化ストレスから守る役割を果たします。酸化ストレスは卵子の劣化やDNA損傷を引き起こし妊娠の成功率を低下させることが知られています
卵胞内の卵子を酸化から守れるのはメラトニンだけです。
卵子の構成などは食生活・卵子の保護はメラトニンと単純に考えてOKです
- メラトニンの生成に必要なトリプトファンメラトニンは日中に摂取されるトリプトファンから体内で生成されるため朝食でトリプトファンを含む食材を摂取することが夜間のメラトニン分泌をサポートします。朝食を抜くことでトリプトファンの摂取が不足し結果的にメラトニン生成に影響を与え卵子の質が低下するリスクが高まります
- 朝食でのトリプトファン摂取がメラトニン生成を促す仕組みトリプトファンはセロトニンという神経伝達物質に変換され夜になるとセロトニンからメラトニンが作られます。朝食にトリプトファンを含む食材(卵、大豆製品、乳製品など)を摂ることで日中にセロトニンの生成が促進され夜間にメラトニンが適切に分泌されるようになります
- メラトニンの分泌が卵巣機能に与える影響メラトニンが不足すると卵巣内での酸化ストレスが増加し卵子の質が低下する可能性があります。これが長期的に続くと排卵も悪くなり、妊娠しづらい体になるリスクがあります
血糖値と自律神経の安定がホルモンバランスに与える
朝食を抜くと血糖値の急激な変動が起こりやすくなります。妊娠を望む方にとって血糖値の安定と自律神経のバランスは非常に重要です。血糖値の乱高下が続くとストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増加しホルモンバランスが崩れ妊娠の準備に重要なホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の分泌が妨げられる可能性があります
- 朝食を摂ることで血糖値を安定させる朝食を摂ることで体はエネルギーを補給し血糖値が安定します。特に複合炭水化物(全粒穀物など)やタンパク質を含む朝食は血糖値の急激な上昇を抑え持続的にエネルギーを供給するため1日の始まりに必要な安定感をもたらします
- 血糖値の変動がホルモンに与える影響朝食を抜いたり低栄養の状態が続くと体は血糖値を上げるためにコルチゾールを分泌し始めます。このコルチゾールは長期的にホルモンバランスを乱し妊娠に必要なホルモンの分泌を抑制する原因となります。また血糖値が不安定な状態は体にとって「飢餓状態」と認識され妊娠に不利な状態を作り出します
プチ断食・ファスティングが妊娠しやすい体に与えるリスク
プチ断食やファスティングは体重管理や健康促進のために取り入れられることが多いですが、妊娠を望む方にとっては長期的に不利な影響を与える可能性があります
- エネルギー不足によるホルモンバランスの乱れ朝食を抜くことで一時的にエネルギー不足に陥ると体は代謝を遅らせたりエネルギーを節約しようとします。これが長期にわたって続くと卵巣機能が低下しホルモン分泌が乱れて排卵が不規則になることがあります。また妊娠のために必要なエネルギーを十分に確保できないため妊娠の可能性が減少することがあります
- ストレスホルモンの慢性的な増加ファスティングやプチ断食は一時的に体にストレスを与える行為です。これによりコルチゾールが過剰に分泌され慢性的なストレス状態を招く可能性があります。慢性ストレスは卵子の質に悪影響を及ぼしホルモンバランスの乱れによって妊娠の確率を低下させます
朝食を摂ることによるストレス管理
朝食をしっかり摂ることでストレス管理が行いやすくなり体内のホルモンバランスが整いやすくなります。特に妊娠を望む方にとって朝食で適切な栄養を摂取することは体にとって重要なリセットタイムとなり妊娠に向けた準備が整います
- 朝食でストレスを軽減する朝食を摂ることで血糖値が安定し体は「エネルギーが十分にある」というシグナルを受け取ります。これによりストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑制され体がリラックスモードに入ることで妊娠に向けたホルモンバランスが整えられます
- 妊娠をサポートする栄養素を朝食で補給朝食でトリプトファンや複合炭水化物、良質なタンパク質、脂質を摂取することで卵子の質を守りホルモンバランスを整えるために必要な栄養素を一日の早い段階で確保できます。またビタミンやミネラル(特に葉酸やビタミンD、鉄分)を朝食でしっかり補給することも妊娠準備には不可欠です
まとめ
プチ断食やファスティングが健康法として注目されていますが妊娠を望む方にとっては朝食を抜くことで逆に卵子の質やホルモンバランスに悪影響を与えるリスクがあることを理解することが重要です。朝食をしっかりと摂ることで血糖値が安定し、ストレスが軽減され、卵子の質を守るためのメラトニン生成が促進されます。妊娠を望む方は朝食を抜かず栄養バランスの取れた食事を心がけることが重要だと考えております
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