卵胞が見えないけど見えるようになるのか?
卵母細胞(卵子)は女性の卵巣内に存在し女性が生まれたときにはすでに数百万個が備わっています。しかし成長と共にその数は自然に減少していきます。思春期に入るころには卵母細胞の数は数十万個にまで減少し30代後半から急速に減り続け閉経のころにはほとんど残っていません。この「卵母細胞の消失」は女性にとって自然な生理現象の一部ですが特定の要因によって卵母細胞の減少が早まることがあります
また生理が来ない、あるいは卵胞がエコーで見えないことで悩んでいる方も多くいるかもしれませんが、実は卵母細胞が完全に消失しているわけではありません。卵母細胞の周囲にある毛細血管が十分に形成されず血流が行き届いていないためホルモンや栄養が届きにくく卵母細胞が育つ環境が整っていない場合があるのです。このため卵胞が成長せずにエコーで確認できない状態になることがあります。毛細血管の増加や血流の改善によって卵巣への栄養供給がスムーズになり卵母細胞の成長環境を整えることが重要です。
卵母細胞の減少を早める要因
- 年齢:30代後半からは卵母細胞の質と量が急激に低下し始めます。これは自然な加齢の一部で体内のホルモンバランスの変化が影響しています
- 医療的要因:放射線治療や化学療法、自己免疫疾患などが卵母細胞にダメージを与えることがあります。これらの治療は特定の病気の治療には必要ですが副作用として卵巣にも影響を与える可能性があります
- 生活習慣:喫煙、飲酒、不適切な食生活は卵巣機能に悪影響を与えることがあります。これらの生活習慣は血流を悪化させ卵巣に必要な栄養が届きにくくなるため、卵母細胞の健康に影響を及ぼします
卵巣に良い生活習慣を半年から1年行うことで、卵胞がエコーで見えるようになる方が多くいます。当院では、卵胞が消失しているのではなく、栄養が届いていないだけだという仮説に基づき指導を行っています。この仮説に基づいたサポートにより、AMHが0.0(現0.02)の状態から100人以上が妊娠に成功した経験があります。悩んでいる方にも、適切なケアを続けることで確認できる卵胞が出現する可能性は充分にあると考えております。
卵巣機能の回復のための「毛細血管の増加」
卵巣機能の回復には卵母細胞の周囲にある毛細血管の数を増やし栄養を十分に供給することが重要です。この方法によって卵巣への血流を改善し卵母細胞の健康をサポートすることができます。
毛細血管増加の科学的背景と可能性
血流と卵巣機能の関係
卵巣への血流は卵母細胞にとってとても重要です。血流が十分であれば卵母細胞に必要な栄養や酸素が適切に届きます。逆に血流が悪いと卵母細胞は栄養不足になり、原子卵胞から卵胞へと成長し、エコーなどで目視できるレベルにまで成長することが難しくなります。その結果、排卵の可能性が減少し、妊娠が難しくなることもあります。血流が改善されることで卵巣の環境が整い、卵母細胞の健康を維持し原子卵胞から卵胞への成長を促進することができる可能性があります。これにより卵巣機能が全体的に向上すると考えられます。
毛細血管を増やす方法
毛細血管の増加(血管新生)は、以下の方法で促進されることが研究されています
- 成長因子の利用:血管内皮成長因子(VEGF)などの成長因子を用いることで毛細血管の新生を促進することができます。これにより卵巣への血流が改善され卵母細胞の環境が良くなる可能性があります
- 再生医療:幹細胞療法やPRPを卵巣に注入することで自然な血管新生を誘導する方法が注目されています。これらの方法は卵巣組織の再生を目指すもので初期の研究では有望な結果が報告されています(この理論を生活習慣などで血管新生を狙っていたので、当院としては待望のエビデンス追加となりました)
- 運動と生活習慣の改善:適度な運動や健康的な食事は全身の血流を改善し結果として卵巣への血流も増加させることが期待されます。しかし毛細血管や卵巣機能について詳しくないままに行う肉体強化や単に健康やファスティング指導などを受けることは、逆に毛細血管を減少させてしまい、卵巣機能に悪影響を与えることがあります。卵巣は非常に繊細な臓器であり、その管理には専門的な知識が必要です。そのため相談相手は慎重に選ぶべきであり、一般的に誰にでも同じような指導をしている場所は避けるべきです。ダイエットを目的とした指導が主な場合には卵巣への負担が増える可能性が高いため注意が必要です
生活習慣と栄養による毛細血管増加の可能性
栄養の重要性
適切な栄養摂取は卵巣への血流を改善し毛細血管の増加を促進するために非常に重要です。ただし特定の栄養素が常に良いとは限らず血液成分や生活習慣から体内の栄養状態を考慮し不足している栄養を補充することが大切です。当院では日本で初めてビタミンDと不妊症の関連を唱え、まだビタミンDのサプリが店頭販売していない時代から指導を行っていました。余計に栄養を補うと代謝に負担がかかることもあるため専門家のアドバイス(サプリを販売している所は避けた方が良いでしょう。カモがネギと鍋と調味料まで持ってきた)を受けて適切に取り入れることが重要です
運動の効果
定期的な有酸素運動(例えば軽いジョギングやストレッチ)は、全身の血流を良くする効果があります。これにより卵巣への血流も改善され卵母細胞の環境が整います。さらに運動はホルモンバランスの調整やストレスの軽減にも役立つため卵巣機能の維持にプラスの影響を与える可能性があります
ストレス管理
ストレスというと多くの方がまず心理的なストレスを思い浮かべるかもしれませんが特に重要なのは身体的なストレスの緩和です。慢性的なストレスは血管を収縮させ血流を悪化させる原因となります。心理的なストレスだけでなく身体的なストレス(生活習慣、足りない栄養、サーカディアンリズムの乱れ、インスリンの抵抗性、就寝時間の遅さ、過度の運動など)も血管や血流に大きな影響を与えるためストレス管理は卵巣の健康にとって非常に重要です。過度な運動や不十分な休息は身体的なストレスとなり血流の悪化を引き起こす可能性があります。そのためストレスを適切に管理し身体を休ませることが卵巣の健康維持に欠かせません。それにより血流が改善され卵巣への栄養供給がスムーズになり卵母細胞の成長を保つことが期待されます
禁煙と禁酒
喫煙は血管を収縮させ血流を悪化させます。またのアルコール摂取も血管の健康に悪影響を与えるため、禁煙と禁酒は卵巣の健康を守るために重要です
再生医療と血管新生の技術の進展
再生医療の分野では幹細胞療法やPRP療法を利用して卵巣への血流を増加させ、卵巣組織の再生を促す研究が進められています。これらの治療法は一部の医療機関で試験的に行われており、初期の結果は非常に有望とされています
また特定の薬剤(例えばVEGF誘導薬)を使用することで血管新生を促進し卵巣への血流を改善する方法も研究されています。さらに、ナノテクノロジーやドラッグデリバリーシステムの進歩により、より効果的に成長因子や薬剤を卵巣に届ける技術が開発されています。これにより卵巣への血流改善の効果が高まることが期待されています
